北海道におけるアオサギの生息状況に関する報告

Status Report of Grey Herons in Hokkaido

はじめに

かつて北海道が蝦夷地であった頃、釧路地方を探検した松浦武四郎は、その著書「久摺日誌」に「山には鶴多く巣をなし」という一文を残している。ツルが山で営巣することはないから、これはアオサギの勘違いであろう。つまり、その当時にはすでに北海道にアオサギがいたということである。さて、時は下って今から4、50年前。この頃になるとアオサギの営巣地を具体的に記した資料がようやく出てくる。そうした資料からイメージされるのは、人里離れた湿原のハンノキ林にひっそりと暮らすアオサギの姿である。

ところが、ここ20年ほどのうちにアオサギの生息状況は劇的に変化してきた。アオサギは道内の至る所で見かけられるようになり、我々にとって随分身近な存在になった。たしかに個体数もかなり増えたようだ。しかし、その一方で彼らは自らの生活に大きな変更を加えてきたことも事実である。そして、人との間に様々な問題を抱えるようにもなった。

こうした中にあって、彼らの置かれている現状を的確に把握し、アオサギと人との付き合い方を真剣に考える必要性がこれまでになく増してきている。北海道アオサギ研究会はこのような状況を受けて2001年に発足し、その後4年間、全道を対象にアオサギ生息地の現地調査を続けてきた。この報告書はこれまでに行ってきた調査の総まとめである。この報告書が少しでも多くの人の目に触れ、アオサギへの関心が高まるきっかけになれば幸いである。そして、アオサギと人とのより良い関係の構築に役立つことを期待して止まない。

なお、本調査の一部は、北海道環境BN会議、および北海道新聞野生生物基金の助成を得て行った。また、本報告書の刊行は、前田一歩園財団の自然環境活動助成を受けて行った。ここに深く感謝の意を表する。