北海道におけるアオサギの生息状況に関する報告

Status Report of Grey Herons in Hokkaido

序論

アオサギは旧世界に広く生息し、その分布域はアジア、ヨーロッパ、アフリカにまたがっている。生息数についての正確な数値はないが、たとえば、ヨーロッパでは15万ないし18万つがいが生息すると見積もられている(Voisin 1991をもとに算出)。国内においてもアオサギの繁殖地は広く確認されており、その分布域は近年拡大しているとされている(環境庁 1994)。北海道でもこの傾向は同じで、繁殖地の数は1980年代から急激に増加している(Matsunaga 2001, Matsunaga et al. 2000)。しかし、生息域の拡大に伴いアオサギと人との摩擦が徐々に表面化するようになり、また、開発等の人為的な影響で古くからある大規模コロニーが消滅するなど、アオサギを取り巻く環境は不安定なものとなっている。しかしながら、こうした状況に関心が払われることは少なく、大規模な個体群が消滅の危機に面した時や、地域で人との間に問題が生じた時に場当たり的な対応がなされているのが実情である。このような状況にあって、道内のアオサギの現状を的確に把握し、生息環境の保全や人との共存を目指した体系的で具体的な保護管理のあり方を整備する必要性が高まっている。

本調査では、道内全てのコロニーにおいて、アオサギの生息状況や生息環境の詳細な調査を行い、同時に、人との間に起きている問題やコロニーの歴史的背景についての情報を収集することで、道内におけるアオサギの現状を的確に把握、評価し、アオサギの保護管理に関する施策を総合的かつ計画的に展開するための目標と方向を示すことを目的とする。