北海道アオサギ研究会

アオサギの駆除実態に関する全国調査

2012年11月28日以降、アオサギ駆除の実績のある全国の市町村に対し、駆除実態に関する電話での聞き取り調査を行っています。これは全国の都道府県に対する同趣旨の調査を行った結果、都道府県レベルで市町村ごとの詳細な状況が把握できていない場合が多々あったことから、当該市町村に対し個別に調査を行っているものです。本来は各市町村には正式な書類を送付すべきでしたが、都道府県からの回答があまりに時間がかかり、最終的に電話連絡せざるをえないケースが多かったため、市町村に対しては迅速を期すため初めから電話で問い合わせることにしました。なお、市町村用につくった書類は以下のとおりです。PDFはこちらからダウンロードできます。


アオサギの有害鳥獣駆除における許認可業務の適正化と審査の厳格化に関する要望書および同業務に関する実態調査へのご協力のお願い

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

当研究会は、人とアオサギが共生できる社会づくりを目標に、北海道を拠点に活動する市民団体です。今回、アオサギの有害駆除数が全国的に激増している事態を受け、アオサギの駆除実績(計画を含む)のある市町村に対し、許認可業務の適正化と審査の厳格化を要望するとともに、同業務の実態調査を行っています。貴市町村においても、平成22年度に駆除の実績(計画を含む)があったことから、今回、要望書を提出するとともに調査へのご協力をお願いする次第です。

アオサギの有害駆除数が十数年前から異常なペースで増え続けています。平成8年度の駆除数は全国で8羽でしたが、平成12年度頃から顕著に増えはじめ、平成21年度には3,000羽を超えるまでになっています(右図参照。元データは環境省の公表値)。

ここ十数年の間にアオサギが全国的に増えたのは確かだと思われますが、駆除数のこれほどの増加はこの間のアオサギの個体数増加分だけで説明できるものではありません。また、アオサギの営巣地が都市域に進出したことで人とのトラブルが増加している可能性も考えられますが、これについては何十年も前から徐々に進行してきた現象であり、ここ十数年でとくに大きな変化があったわけではありません。

一方、アオサギの保護管理に係る法律面においては、平成11年度の地方自治法の改正で「条例に よる事務処理の特例」が盛り込まれ、この規定が鳥獣保護法にも適用されました。この一連の法改正 により、アオサギ駆除における市町村への権限委譲がおおいに進んでいます。

これらのことを考慮すると、近年の駆除数の劇的な増加は、アオサギの生息状況の変化に伴うものというよりは、むしろ有害鳥獣駆除に関する制度ないしその運用面での問題が大きいのではないかと考えます。また、平成20年度からは鳥獣被害防止特措法が施行されており、アオサギの保護管理の 一元化が今後ますます困難になるのではないかとの懸念もあります。

当研究会ではこうした状況をふまえ、今年度当初から全国の都道府県に対し、アオサギの有害鳥獣駆除における許認可業務のいっそうの適正化と審査の厳格化を呼びかけて参りました。その後、貴都道府県より回答を得たところ、貴都道府県においては駆除に関する許認可業務が各市町村に委任されており、かつ、貴市町村で平成22年度にアオサギの駆除が実施(計画を含む)されたとの情報を得ました。つきましては、今回、アオサギの有害鳥獣駆除に際し、以下の内容をご検討いただきたくお願い申し上げる次第です。なお、今回は、駆除数の多少にかかわらず、全市町村一律の要望となっておりますことをご了承ください。

1. アオサギは、国内さらには海外へと広範囲に移動する鳥であり、日常の行動半径は 30キロを超えます。また、アオサギの個体群は繁殖地ごとに独立して存在しているのではなく、地理的に繋がりのある複数の個体群が連携し、広域でまとまった個体 群が形づくられていると考えられています。したがって、アオサギの保護管理計画を立てる上では、このような地域の個体群構造を理解することがまず必要となります。仮に、それらを無視し、その場しのぎの安易な駆除を行うと、駆除による効果がまったく得られないばかりでなく、広域での個体群構造の安定性を大きく損ないかねません。結果的に、人との間にさらに深刻なトラブルを引き起こす可能性が高 くなります。このため、駆除にあたっては、地域内のアオサギの生息状況を的確に把握した上で、周辺自治体での生息状況も考慮し、それら自治体と連携を取りつつ、慎重な計画を立てるようお願いします。
2. 経済的被害により駆除が申請される場合、被害額が過大に評価されるケースがしばしば見受けられます。客観的、科学的なデータに基づかない駆除申請を安易に許可することのないよう、より一層厳格な審査をお願いします。
3. 内水面漁業や農業に携わる個人や団体から、何年にもわたり同じ駆除申請が出されることがあります。このようなケースでは駆除の効果が期待できない場合がほとんどです。アオサギは一部が駆除されても、餌があれば別の個体が飛来するため、地域のアオサギ個体群を絶滅させないかぎり被害はなくせません。このような場合は、駆除ではなく、被害を軽減するための別の方法や補償等を検討するようお願いします。

当研究会からの要望については以上です。何卒ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。
つづいて、駆除関連資料のご提供のお願いです。当研究会では、今回の調査結果をもとに、アオサギの生態学的および保全生物学的見地から「アオサギと人との共存に向けた提言(仮題)」を報告書としてまとめたいと考えております。報告書は今年度中に作成し、関係諸機関に送付するとともに、資料を含めた全文を当研究会のホームページ(https://www.greyheron.org/)に掲載する予定です。
つきましては、ご多忙のところ誠に恐縮ですが、以下の3項目のうち該当する資料をお送りいただきたくお願い申し上げます。なお、資料の年度を全国で統一するため、22年度の資料をご提供ください(23年度は未集計の自治体があるため)。

1. 鳥獣保護法によるアオサギを対象とした駆除の内訳が示された資料
2. 鳥獣被害防止特措法によるアオサギを対象とした駆除計画を策定した鳥獣被害防止計画
3. 2の鳥獣被害防止計画の結果が示された資料

今回の調査は単に駆除数を調べるものではなく、駆除に至るまでの経緯を分析することに主眼を置いています。そのため、駆除数だけでなく、被害の内容、被害地域、推定被害金額等について可能な範囲でできるだけ詳細な内容の資料をご提供ください。なお、資料の公開にあたり情報の開示請求等が必要な場合はその旨ご連絡いただければと思います。

次に、上記報告書作成のため、別紙2にアンケートを用意しました。こちらも貴重な基礎資料となりますので、どうかご協力いただけるようお願いします。なお、同封のアンケート用紙は、当研究会ホームページ上のダウンロードページ(https://www.greyheron.org/activity/12-11-28/questionnaire/)より各種形式で入手できます。また、独自様式を用いていただいても構いません。

以上の件につき、誠に恐縮ではございますが、12月半ば頃までを目処にご対応いただけると有り難く存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

アオサギを対象とした有害鳥獣駆除に関するアンケート(市町村用)

1. アオサギの生息状況を把握するための調査(モニタリング)を行っていますか?

□ 行っている    □ 行っていない
※行っていると答えられた場合、個体数や繁殖地の位置など詳細情報を示した資料をお送りいただければと思います。
※行っていないと答えられた場合、推定値(およびその根拠)があれば以下に記入してください。
繁殖期の推定つがい数 _________ 羽  冬季間の推定個体数 __________ 羽
推定繁殖地数 _________ 箇所
推定した根拠  □ あり (根拠となる資料名等:           )    □ なし

2. アオサギの保護管理を個体群レベルで行う上で、科学的知見に基づく具体的な施策があります か?

□ ある    □ ない
※あると答えられた場合、その具体的内容についてお書きください。

3. アオサギの駆除申請を審査する際に、申請者がそれまでに試みた防除策に対して評価するしく み、および評価基準はありますか?

□ ある    □ ない
※あると答えられた場合、評価基準について具体的にお書きください。

4. 農林水産関係の被害に係るアオサギの駆除申請に際し、申請者に被害額の提示を求めていますか?

□ 求めている    □ 求めていない
※求めていると答えられた場合、提示される被害額は誰が査定していますか?
□ 申請者    □ 行政担当者    □ その他(     )
※上で選択された査定者それぞれについて、被害額の科学的、客観的な査定方法の有無をお書きください。また、科学的、客観的な査定方法がある場合は、その内容について具体的にお書きください。

5. 実施されたアオサギの駆除について、その効果を評価するしくみはありますか?

□ ある    □ ない
※あると答えられた場合、その具体的内容をお書きください。

6. 人とアオサギの共生について、理念やビジョンがありますか?

□ ある    □ ない
※あると答えられた場合、その具体的内容についてお書きください。

7. アオサギの駆除や保護政策、および今回の要望やアンケートについてご意見がありましたらお聞かせください。

以上で質問は終わりです。ご回答いただいた内容は報告書の中で有意義に活用させていただきます。このたびは御協力ありがとうございました。