北海道アオサギ研究会

虻が島のアオサギ保護を求める要望について

当研究会では、2017年より富山県氷見市の虻が島で行われているアオサギの駆除を問題視し、駆除の行為主体である氷見市と駆除を許可している富山県にアオサギの保護を求める要望を行っている。当事案は現在進行中の案件であり、アオサギはもとより野生動物の保護にとって極めて憂慮すべき問題を含むことから、こうした事態に至ったこれまでの経緯と、当研究会と市、県とのやりとりを公開し、ここに問題の所在を明らかにするものである。

虻が島は富山県氷見市の沖合約800mにある無人島(1,350m2)で、以前からアオサギが生息しており営巣地としても利用されてきた。アオサギの生息数は20年ほど前から増加傾向にあり、氷見市によると昨年の時点で約200羽を確認したという。一方、この島は北方系の植物と南方系の植物が同所的に混生するという学術的な価値があり、県は島とその周辺を天然記念物に指定している。市はアオサギの営巣が島の植物に悪影響を与えているとみなし、以前からさまざまな方法でアオサギの追い払いを行ってきたが、従来の方法ではさほどの効果が得られなかったことから、2017年よりタカを使った追い払いを行うようになった。なお、これまでの市の取り組みについては当初から地元新聞をはじめ各種メディアで取り上げられている。以下にその一部を示す。

アオサギのフン害防げ 虻が島で営巣材撤去 氷見市教委と住民連携(中日新聞 2004年4月19日)
島にも人間生活の弊害?(中日新聞 2004年4月25日)
海浜植物をサギの被害から守れ 富山県氷見市の虻が島 蛍光の糸で包囲が奏功(富山新聞 2007年12月18日)
虻が島のアオサギの巣撤去へ 氷見市教委、「ふん害」対策(富山新聞 2010年9月1日)
虻が島のふん害深刻 氷見・巣除去いたちごっこ(北日本新聞 2014年03月10日)
虻が島のSOS(北日本新聞 2014年7月25日)
虻が島を清掃、自然観察 灘浦小・中(北日本新聞 2014年7月29日)
虻が島の環境保護氷見署員取り組み(中日新聞 2017年5月31日)
アオサギ対策タカ活躍 虻が島貴重な植生守れ(中日新聞 2017年6月17日)
アオサギ撃退 タカで虻が島のフン害防ぐ 氷見/富山(毎日新聞 2017年6月19日)
アオサギ対策にタカ 氷見・虻が島で市教委(北國新聞 2017年6月19日)
フン害アオサギ、タカで撃退 9割超の減少に成功(朝日新聞 2017年6月27日)

当研究会はこの問題がメディアによって世間に知られるようになった2004年頃より事態の推移を注視してきた。当初は、植物保護のためには追い払いも止むを得ないとの市の判断に同意し、市に対してはとくに働きかけを行ってこなかった。状況が変わったのは2017年にタカを使った追い払いを始めてからである。この方法はアオサギの営巣期に行われるため、実質的にアオサギの卵やヒナの殺傷を伴う。つまり、これは追い払いではなく駆除に相当する。このことを含め作業の詳細を把握するため、2017年6月21日に氷見市教育委員会総務課に代表の松長が電話で問い合わせを行った。市の回答の概要は次のとおりである。括弧内に松長によるコメントを記す。

・本事業は防除ではなく駆除である。
・県からヒナ20羽(30羽?)の捕獲許可が認められている。(数値は私の記憶が曖昧なため正確ではない)
・タカはコロニーの周りの海上を飛ぶだけでアオサギを襲うことはない。
・巣は可能な場合は落としている。(卵やヒナも巣ごと落とされることになる)
・高いところにある巣は落とせない。したがって、それらの巣では作業後も営巣が続く場合がある。
・トビがヒナを食べているようだ。(親鳥が巣を放棄すると、ヒナは無防備のまま巣に残され、他の鳥に捕食される)
・2017年は4月12日に第1回目の作業を行った。
・第1回目の作業時には200羽くらいいたが、前回は20羽、今回は5羽だった。
・今後は様子を見て、また増えるようであれば再度タカを飛ばすことを考えている。
・予算時期の関係や早春は海が荒れていることが多いこともあり作業開始がこの時期になる。
・2018年は船が出せれば3月に作業を開始できればと考えている。

これを受けて当研究会ではさまざまな面から市の行為の正当性について検討してきたが、本事例においてはアオサギを駆除することに正当な理由はないとの結論に至り、平成30年3月4日、以下の要望書を市と県に郵送した。なお、以下のやりとりについてはネット上で公開する旨を予め伝えている。

平成30年3月4日

氷見市教育総務課 担当者 様

虻が島のアオサギ追い払いに関する要望

北海道アオサギ研究会は、北海道を拠点にアオサギの生態および保全に関わる調査研究を行っている市民団体です。基本的に道内を拠点に活動していますが、人との間に起こる種々のトラブルや駆除については全国規模で情報収集を行い、必要に応じて関係機関への提言や要望を行っています。

さて、昨年、虻が島における猛禽を使ったアオサギの追い払いがメディアを通じて広く紹介されました。当研究会では、同島でアオサギが問題視されるようになった十数年前から行政や市民の対応に注目しており、今回の件についても各種メディアからの情報収集のほか、貴課担当者様にも電話にて問い合わせを行い、作業の状況等について情報を得てきたところです。当研究会としては、猛禽による追い払いそのものについては反対いたしません。しかし、追い払いの結果、ヒナが死亡する可能性があることに関しては、不当であり容認できないとの考えです。

ついては、今シーズンも引き続き追い払いを行われる場合、ヒナが犠牲になることのないよう、営巣開始直後の早い時期に作業を実施されることを要望いたします。以下に当要望の論点と当研究会の考え方を記します。

ご承知のとおりアオサギは晩成性の鳥で、ふ化後も一定期間、巣を離れず親の世話を必要とします。このためその期間中に何らかの理由で親鳥が巣に戻らなくなると、ヒナは自活することができず、巣の中で餓死するか捕食者に襲われるのを待つしかありません。「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針」においては、「III-第四-3-1-(1)捕獲物又は採取物の処理等」の項で、捕獲個体を致死させる場合は「できる限り苦痛を与えない方法」で行うことが求められています。厳密に解釈すれば、ここで言及されているのは捕獲された個体であって残されたヒナは対象外となります。しかし、条項の主旨を理解すれば両者を区別する理由はなく、巣に残されたヒナについても捕獲個体と同等の基準が適用されるとみるのが妥当と考えます。残されたヒナが餓死や捕食により大変な苦痛を受けるであろうことは想像に難くありません。この点において、虻が島で行われている追い払いは指針の規定に反するものであると考えます。

こうした事態は追い払いの時期を前倒しすれば簡単に防ぐことのできるものです。アオサギは産卵の前後で巣に対する執着の度合いが大きく変わります。そのため、通常は比較的執着しない産卵前の時期に追い払いを行うのが効果的です。また、鳥獣保護法に成鳥やヒナだけでなく卵も損傷してはならないとの規定があるのは周知のとおりで、この規定を遵守するためには飛来直後から産卵前までに追い払いを行う必要があります。ところが、昨年の虻が島ではそうした通常の方法がとられることなく、敢えてヒナのいる遅い時期に作業が行われています。これについては前回の問い合わせで、春先の海が荒れるため作業日が調整しづらいこと、および予算時期の都合が理由であるとのご回答がありました。しかし、これらはいずれも人間側の都合であり、解決不可能な問題とは言えません。とりわけ予算の都合に至ってはまったく理由にならないと考えます。これらの理由は動物の命を甚だしく軽視したものと言わざるを得ず、到底認めることはできません。

虻が島からアオサギを追い払う理由は、アオサギのフン等の影響から希少な植生を保護することであると伺っております。植生の保護については、鳥獣保護法でも「生態系に係る被害の防止」目的での駆除が認められているところであり、今回の追い払いはこの規定に沿ったものと理解しています。つまり、虻が島のアオサギは本来の生態系から外れた異物とみなされていると考えられます。しかし実際は、アオサギは紛れもなく生態系の正規の構成員であり、これは虻が島においても同様です。外来種や、あるいは捕食者がいなくなり異常に増えすぎた種が関わるものであれば、それを生態系への被害とみなすことは可能ですが、アオサギはそうした種とは明かに異なります。現在の環境に適応し、生態系のいるべき位置にいるのが現在のアオサギの状況です。島の希少な植物への被害を避けたいという気持ちはよく分かりますが、アオサギが生態系の自然な一部である以上、追い払いは「生態系に係る被害の防止」どころか、むしろ生態系の自然な遷移を人為的に攪乱する行為に当たると考えます。もっとも、この考え方は多少ラジカルにすぎる嫌いがありますので、これを理由に追い払いを否定するつもりはありません。ただ、追い払いを計画されるにあたり、アオサギも生態系の正当な一員であるという点を十分に考慮していただきたいと思います。

もちろん、仮に「生態系に係る被害の防止」を追い払いの目的として認めた場合でも、許容できるのは飽くまで成鳥の追い払いであってヒナを殺傷することではありません。今回の追い払いは、端的に言えば、植物の保護と引き替えにアオサギのヒナの命を差し出させるものだといえます。希少な植物の保護の重要性については十分理解していますが、その保護のためにヒナを犠牲にすることにはいかなる正当な理由も認められません。もっとも、生態系の論理のみを重視する考え方であれば、これもあるいは正当化できるかもしれません。しかし、現代の鳥獣保護行政が目指すべきは動物倫理にも十分に配慮した施策であり、生態系原理主義のような極端な考え方に基づくものではあってはならないと考えます。

以上の理由から、追い払い時期を早め、アオサギのヒナを犠牲にしない方法がとられることを強く要望します。

なお、当事案は野生動物の保護について、その考え方の核心が問われるものであり、行政と市民の間でコンセンサスをつくっていく上で極めて重要度の高い問題であると認識しています。ついては、ご多忙のところ誠に恐縮ですが、貴市の今後のご対応についてご回答くださいますようお願いします。なお、同趣旨の要望書を県にも提出してありますことを申し添えます。

平成30年3月4日

生活環境文化部 自然保護課 担当者 様

氷見市虻が島のアオサギ追い払いに係る捕獲許可に関する要望

北海道アオサギ研究会は、北海道を拠点にアオサギの生態および保全に関わる調査研究を行っている市民団体です。基本的に道内を拠点に活動していますが、人との間に起こる種々のトラブルや駆除については全国規模で情報収集を行い、必要に応じて関係機関への提言や要望を行っています。

さて、昨年、虻が島において植生を保護する目的で猛禽を使ったアオサギの追い払いが行われたことはご承知のことと思います。当研究会では、同島でアオサギが問題視されるようになった十数年前から行政や市民の対応に注目しており、今回の件についても各種メディアからの情報収集のほか、氷見市教育総務課へも電話にて問い合わせを行っています。この結果、猛禽によるアオサギ成鳥への危害はないものの、追い払いによってヒナが死亡している可能性があることが分かりまた。これについては同課も認めており、そうした状況を見越した上で県からヒナの捕獲許可をとっていると聞いています。当研究会としては、猛禽による追い払いそのものについては反対いたしません。しかし、追い払いの結果、ヒナが死亡する可能性があることに関しては、不当であり容認できないとの考えです。

ついては、今シーズン、市から再び捕獲申請があった場合、これを許可されないよう要望いたします。以下に当要望の論点と当研究会の考え方を記します。

ご承知のとおりアオサギは晩成性の鳥で、ふ化後も一定期間、巣を離れず親の世話を必要とします。このためその期間中に何らかの理由で親鳥が巣に戻らなくなると、ヒナは自活することができず、巣の中で餓死するか捕食者に襲われるのを待つしかありません。「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針」においては、「III-第四-3-1-(1)捕獲物又は採取物の処理等」の項で、捕獲個体を致死させる場合は「できる限り苦痛を与えない方法」で行うことが求められています。厳密に解釈すれば、ここで言及されているのは捕獲された個体であって残されたヒナは対象外となります。しかし、条項の主旨を理解すれば両者を区別する理由はなく、巣に残されたヒナについても捕獲個体と同等の基準が適用されるとみるのが妥当と考えます。残されたヒナが餓死や捕食により大変な苦痛を受けるであろうことは想像に難くありません。この点において、虻が島で行われている追い払いは指針の規定に反するものであると考えます。

こうした事態は追い払いの時期を前倒しすれば簡単に防ぐことのできるものです。アオサギは産卵の前後で巣に対する執着の度合いが大きく変わります。そのため、通常は比較的執着しない産卵前の時期に追い払いを行うのが効果的です。また、鳥獣保護法に成鳥やヒナだけでなく卵も損傷してはならないとの規定があるのは周知のとおりで、この規定を遵守するためには飛来直後から産卵前までに追い払いを行う必要があります。ところが、昨年の虻が島ではそうした通常の方法がとられず、敢えてヒナのいる遅い時期に作業が行われています。これについては市への問い合わせで、春先の海が荒れるため作業日が調整しづらいこと、および予算時期の都合が理由であるとの回答がありました。しかし、これらはいずれも人間側の都合であり、解決不可能な問題とは言えません。とりわけ予算の都合に至ってはまったく理由にならないと考えます。これらの理由は動物の命を甚だしく軽視したものと言わざるを得ず、到底認めることはできません。

虻が島からアオサギを追い払う理由は、アオサギのフン等の影響から希少な植生を保護することであると伺っております。植生の保護については、鳥獣保護法でも「生態系に係る被害の防止」目的での駆除が認められているところであり、今回の追い払いはこの規定に沿ったものと理解しています。つまり、虻が島のアオサギは本来の生態系から外れた異物とみなされていると考えられます。しかし実際は、アオサギは紛れもなく生態系の正規の構成員であり、これは虻が島においても同様です。外来種や、あるいは捕食者がいなくなり異常に増えすぎた種が関わるものであれば、それを生態系への被害とみなすことは可能ですが、アオサギはそうした種とは明かに異なります。現在の環境に適応し、生態系のいるべき位置にいるのが現在のアオサギの状況です。島の希少な植物への被害を避けたいという気持ちはよく分かりますが、アオサギが生態系の自然な一部である以上、追い払いは「生態系に係る被害の防止」どころか、むしろ生態系の自然な遷移を人為的に攪乱する行為に当たると考えます。もっとも、この考え方は多少ラジカルにすぎる嫌いがありますので、これを理由に追い払いを否定するつもりはありません。ただ、追い払いが計画される場合には、アオサギも生態系の正当な一員であるという点が十分に考慮されるべきであると考えます。

もちろん、仮に「生態系に係る被害の防止」を追い払いの目的として認めた場合でも、許容できるのは飽くまで成鳥の追い払いであってヒナを殺傷することではありません。今回の追い払いは、端的に言えば、植物の保護と引き替えにアオサギのヒナの命を差し出させるものだといえます。希少な植物の保護の重要性については十分理解していますが、その保護のためにヒナを犠牲にすることにはいかなる正当な理由も認められません。もっとも、生態系の論理のみを重視する考え方であれば、これもあるいは正当化できるかもしれません。しかし、現代の鳥獣保護行政が目指すべきは動物倫理にも十分に配慮した施策であり、生態系原理主義のような極端な考え方に基づくものではあってはならないと考えます。

以上の理由から、虻が島での追い払いによるヒナの犠牲は不当であり、市から昨年同様の捕獲申請があった場合にはこれを許可されないことを強く要望します。

なお、当事案は野生動物の保護について、その考え方の核心が問われているのであり、行政と市民の間でコンセンサスをつくっていく上で極めて重要度の高い問題であると認識しています。ついては、貴県の今後のご対応についてご回答くださいますようお願いします。なお、同趣旨の要望書を市にも提出してありますことを申し添えます。

以上の要望について、3月19日に県からメールで回答をいただいた。

北海道アオサギ研究会 代表 松長 克利 様

平成30年3月4日付けでご提出いただいた要望について回答いたします。

「氷見市から鳥獣保護管理法第9条第1項(鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の許可)に係る申請があった場合に、これを許可しないように。」とのご要望をいただきました。

同法第9条第3項では、「各号のいずれかに該当する場合を除き、許可しなければならない。」と規定されており、県としましては、申請があった場合には、同規定に基づき内容を審査することとなります。
また、巣内の卵及びヒナについては、苦痛を与えないために、速やかに採取及び捕獲するよう、引き続き指導してまいります。

自然保護課 野生生物係

この回答は十分に納得できるものではなかったため、同日、以下のとおり県の対応について再度問い合わせを行った。

富山県自然保護課野生生物係 担当者様

このたびはご多忙のところご回答をいただき誠にありがとうございます。

今回の件で当研究会がもっとも問題視しているのは、作業時期を早めることで卵やヒナの殺傷が避けられるにもかかわらず、それがなされていないことです。予算時期等、問題の所在とかけ離れた理由で鳥獣の命を奪うことはまったく不当でありいかなる正当性もありません。これは法律の問題以前に鳥獣行政を行う上でのモラルの問題です。もし貴課がこれをご承知の上で氷見市の申請を許可されるのであれば、動物の命を不当に蔑ろにしたという批判は免れないと考えます。

追い払い作業後に残された卵やヒナの処置については、「速やかに採取及び捕獲するよう、引き続き指導」するとのご回答をいただきました。それが望ましい処置かどうかはさておき、卵やヒナを捕獲するにはまず人が巣にアプローチできなければなりません。しかし、虻が島ではそれができないからこそ敢えて今回のような猛禽を使った追い払いを行っているのです。巣に直接手を下せるのであればこのような面倒なことはしないでしょう。貴課は虻が島の状況を本当に把握した上で許可の判断をされているのでしょうか? このようなことでは疑問を抱かざるを得ません。

今回の件は基本的に氷見市の問題ですが、鳥獣行政の基本的な姿勢が問われる重要な事案のため、敢えて貴課にもご対応をお願いしています。今シーズン、島にアオサギが飛来せず、昨年のような状況が起こらないことを願うばかりですが、万一、氷見市から昨年同様の申請があった場合は、当研究会からの意見を十分ご検討いただき、賢明なご対応をされることを切に願います。また、申請があった際には、研究会としてその後の対応を考えたいと思いますので、貴課のご判断についてご一報いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

この後、3月23日に富山県自然保護課野生生物係の担当者から電話で連絡があった。そこで話し合った内容の要点は以下のとおり。

論点1 営巣期間中の作業の是非について
(私)産卵開始後の追い払いは卵やヒナを殺すことになるので、営巣期間中の捕獲許可は認めないでほしい。
(県)この作業はアオサギに営巣させないためのものなので、途中で止めると再びアオサギが卵を産んでしまう恐れがある。したがって、営巣期間中もずっと続けなければ意味がない。
(私)アオサギが卵を産む前に常に追い払いが成功する限りにおいてこの方法が用いられることに異存はない。しかし、もしアオサギが抱卵ないし育雛していることが確認されれば、その時点でそのシーズンの作業は打ち切るべきである。
(県)その意見には同意できない。

論点2 植物を保護するためにアオサギの命を奪うことの正当性について
(私)今回の捕獲許可は、鳥獣保護法の卵やヒナの殺傷を禁じた条項に生態系の保護を目的とした例外規定を適用したものと思われるが、今回の事例は例外規定を拡大解釈したもので正当な適用とは考えられない。
(県)アオサギはどこにでもいる種なので、個の命よりも生態系全体のバランスを維持することのほうが優先される。

以上のように、いずれの論点も双方が同意できる結論は見いだせなかった。

また、氷見市からは3月22日にメールにて以下の回答をいただいた。

調査の出張等で連絡が遅くなり申し訳ございませんでした。

虻が島のアオサギ追い払いに関する要望についての回答は下記の通りです。

虻が島は、南方系海浜植物であるハマウドや北方系海浜植物であるエゾヒナノウスツボが共生する貴重な植生を残していることから、県指定名勝・天然記念物に指定されています。しかし、近年、アオサギが虻が島に飛来するようになり、貴重な海浜植物が減少していることから、アオサギ対策を行っています。

鷹によるアオサギの追い払いに関しましては、ご指摘のとおり、営巣開始直後の3月上旬から業務を行うことで、ヒナが犠牲になることのないように配慮しております。

今後も、鳥類に限らず、野生動植物の保護を行う際には、対象生物やそれを取り巻く環境に与える影響を極力抑えていきたいと考えております。

以上が氷見市としての回答でございます。

これに対して、翌24日にメールで以下のとおり返答した。

ご多忙のところご回答ありがとうございました。

今年は3月上旬から始められているということで、厳しい気象条件の合間を突いての作業でさまざまなご苦労があることとお察しいたします。

さて、貴市のご回答についてですが、依然、疑問の解消されない点がありますので再度お伺いいたします。営巣直後から作業を行うという今回の貴市の方針は、当研究会がまさに要望したいところであり、これについてはまったく異存はありません。営巣の早い時期から間隔を開けずに追い払いを行うことで、アオサギを犠牲にすることなく目的を達せられる可能性は大いにあると思います。しかし、貴市のご回答では、追い払いにもかかわらず、昨年のように営巣が継続した場合、すなわち産卵しヒナが生まれた場合にどのように対応されるのかという点について明確な基準が示されていません。これは前回の要望に示しましたとおり本件の核心でもあります。難しい判断だとは思いますが明確にお答えいただけるよう再度お伺いいたします。

なお、今回のメールは代表個人としての意見で研究会としての意見ではありません。今回の質問に対する貴市のご回答をいただいた後に、再度、研究会内で議論し、意見、要望をとりまとめる予定です。ついては、こちらの勝手で申し訳ないのですが、4月6日に研究会の次期ミーティングがありますので、それ以前にお答えをいただけるようお願いいたします。また、今シーズンのこれまでのアオサギの飛来状況および追い払いの効果についても教えていただけると幸いです。

ともかく、3月は追い払いの効果がもっとも期待できる時期だと思います。年度末でお忙しいこととは思いますが、週に一度ではなく作業日の間隔をできるだけ短くし、産卵前の全個体放棄が確実になるようお願い申し上げます。

これに対し、3月26日、市から再び回答をいただいた。

ご連絡ありがとうございます。

基本的には追い払いを行っているので、巣があった場合には雛が孵化する前に巣を撤去することになります。もし、雛が入っていれば、雛に苦痛を与えることの無い様に「巣ごと撤去する」ということになります(今のところ、そのような状況はありませんが)。

今シーズンですが、巣の数は1桁代(昨日の時点で7つ)でした。追い払いの効果は出ていると思います。

同日、以下のとおり返答した。

さっそくのご回答ありがとうございます。

今回とこれまでのご回答をよく検討し、研究会としての今後の対応を考えたいと思います。4月6日以降に再度何らかの要望等をするかもしれませんが、その時はまたよろしくお願いします。

ともかく、今シーズンは最初から営巣数が少ないということで少し安心しました。一刻も早く島のアオサギが0になり、アオサギへの実害がなくて済むように願ってます。

3月4日付けの要望書では、作業に伴うヒナの犠牲を0にすることを要望してきたが、このことについて3月26日の市の回答は確実な保証を得るものではなかったため、4月9日付けであらためて以下の要望書を郵送した。

平成30年4月9日

氷見市教育総務課 担当者 様

虻が島のアオサギ追い払いに関する再度の要望

虻が島でのアオサギ追い払いの件について、貴市の見解をお伺いし、また当研究会でも十分に検討した結果、あらためて、産卵後の追い払いの中止を強く求めます。

以下、これまでに述べてきたことの繰り返しになりますが、当研究会の見解を簡単に記します。まず、猛禽を使った追い払いや、島からアオサギを一掃する試みそのものにはまったく反対いたしません。しかし、産卵後に追い払いを行えば、卵やヒナが犠牲になる恐れがあり、これは基本的に鳥獣保護法により禁じられている行為です。生態系の保護等の例外規定はあるものの、その使用に際しては極めて慎重であったからこそ、曲がりなりにも現在の鳥獣保護が成り立っているわけです。それは一昨年までの虻が島のアオサギへの対応についても同様であったと了解しています。しかしながら、昨年の追い払いはこれまで守られてきた一線を超えたものとみなさざるを得ません。虻が島での追い払いが、負の側面が顧みられないままアオサギ対策のモデルケースとなることを非常に憂慮しています。アオサギは飛来直後から巣作り期にかけて集中的に追い払うことで営巣を諦めさせることは可能です。今シーズンに関して言えば、すでに残っている個体数はごく僅かということで、万一、一部の個体が残ったとしても、その少数のアオサギが島の植生に甚大な被害をもたらすとは思えません。たしかに、一部でも残った場合、今シーズンのうちに一掃した場合と比べて来シーズンの島への飛来数が増える可能性はあると思います。しかし、それは単に作業効率が良くなるか悪くなるかの話であり、鳥獣の命を奪う可能性のある行為において効率のみが優先されることがあってはならないと考えます。 当研究会は、ヒナが苦痛のない死を迎えられることを求めているわけではなく、ヒナの処分をどうするかといった事態にならない方法がとられることを求めています。この点は先日いただいたご回答で、多少誤解をもたれているとの印象をもちましたので、念のため申し添えます。なお、万一、貴市が今後も営巣中の追い払いを中止しないという立場をとられる場合はその理由をお聞かせください。

以上

2018年12月現在、この要望書に対する回答はまだ受け取っていない。

12月23日、今シーズンの作業状況の記録ないし資料の提供を市にお願いした。

北海道アオサギ研究会代表の松長です。春先は年度末のお忙しいところご対応いただきありがとうございました。最後にいただいたメールでは、直近の調査時の巣数が一桁台だったということで、早い時期に作業を終えられたのではと思いますが、いかがだったでしょうか?

さて、今年もはや年の瀬となり、今シーズンの追い払い事業についてはすでにまとめ終えられたのではと推察いたします。ついては、これまでの作業状況をまとめた資料などありましたらお送りいただきたくお願い申し上げます。できるだけ詳しい状況を知りたいところですが、報告書などとくに作成されてないようでしたら、作業日とその時々の営巣数(あるいは羽数)など記録されている範囲でお教えいただければと思います。また、すでに決まっているようであれば来シーズンの計画についてもお知らせ願えればと思います。

当事案は先にお届けした要望書に記したとおり、今後のアオサギの保全全般を考える上で決して蔑ろにできない重要な問題を含んでいると認識しています。お忙しいようでしたら年が明けてからでも結構です。何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

なお、これまでの経緯については研究会のHP上にまとめてあります。よろしければご参考になさってください。

これ以降、状況に進展があり次第、加筆する予定である。