北海道におけるアオサギの生息状況に関する報告

Status Report of Grey Herons in Hokkaido

阿寒湖コロニー

阿寒湖とコロニーのあった林(画面奥)

阿寒町シュリコマベツ、阿寒湖北岸の半島状に突き出した部分にあったが、現在このコロニーは消滅している。周囲は針広混交林で湿地状の平坦地である。コロニーの東側は阿寒湖に面しており、小さな湾を隔てて約600m北東にはニジマスの養魚場がある。

1990年5月21日に松田あおい氏が行った調査では、シナノキ16本、ヤチダモ3本、シウリザクラ1本の3種20本に、使用巣36を確認している。当時の営巣面積は約1,000m2である。

コロニーの位置(大きな地図で見る

このコロニーが成立した正確な年は分からない。ただし、釧路市立博物館の橋本正雄氏によると、1980年代に半島状の部分で10数巣を目撃したということで、これが当コロニーと同一である可能性は高い。また、1985年にはチュウルイ島近くの湖畔に8巣が確認されている(橋本 1987)が、これが当コロニーと同一かどうかは分からない。2003年7月4日に養魚場付近からコロニーを観察したところ、営巣の気配は無くコロニーは消滅したものと考えられる。阿寒湖の遊覧船の乗務員によると、このコロニーは1995年か1996年頃にはまだ利用されていたという。このコロニーが消滅した正確な年は不明である。コロニーの近くの養魚場ではアオサギによる養魚の食害が問題になっている。また、コロニーのあった場所は鳥獣保護区に指定されている。

このコロニーの周辺では他にも複数のコロニーが目撃されている。阿寒湖畔エコミュージアムセンターの高山肇氏によると、2000年ないし2001年にチュウルイ島にコロニーがあったが、2002年には消滅していたということである。また、阿寒湖漁業共同組合の人によると、1989年には当コロニーの南西約4kmの湖岸にコロニーがあったという。阿寒湖ではこれまでに、一歩園裏庭をはじめ、小島、大島、尻駒別川河口など各所でコロニーが確認されており、比較的狭い地域に短期間にいくつものコロニーが生成消滅するという他地域にはない現象が見られる。したがって、2002年の時点で阿寒湖内での営巣は確認されていないものの、いずれかの場所で営巣している可能性は十分あると思われる。なお、阿寒湖漁業協同組合の人によると、阿寒湖でアオサギが目立つようになったのは1985年頃からだという。

参考文献
橋本正雄 1987 北海道東部、阿寒湖およびその周辺の鳥類センサスについて 釧路市立博物館紀要 第12輯 7-22

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