アオサギの有害駆除に係る問題点に関する報告

Report on the Problems of Elimination of Grey Herons in Japan

2. アオサギの置かれている現状

(1)種としての保全上の位置づけ

アオサギ(Ardea cinerea)は旧大陸(アジア・アフリカ・ヨーロッパ)に広く分布し、個体数も多い(注1)。このため、IUCNのレッドリストでは「軽度懸念(LC)」に分類されており、現在、種としての絶滅が心配される状況にはない。また、日本に生息する亜種 jouyi(サハリン南部から東南アジアにかけて分布)は、基亜種 cinerea に次ぐ分布域と個体数を有すると見られており、亜種としても保全上の差し迫った懸念があるわけではない。しかし、地域レベルで見ると、過去には過度の駆除が一国のアオサギを絶滅寸前にまで追い込んだ事例(注2)もあり、駆除が個体群の存続に重大な脅威となってきたのも事実である。

(2)国内の生息数と分布状況

国内のアオサギの生息数についてはほとんど何も分かっていない。ただし、いくつかの地域(7道府県)では都道府県かそれよりも小規模の地域レベルで調査がなされており(注1)、個別にあるていど正確な生息数が見積もられている。当研究会ではそれらの調査報告をもとに、調査されていない地域の生息数を推定し、極めて大雑把な見積もりながら全国のアオサギの生息数を約43,000羽(±20,000羽)と推定した。

一方、生息数の推移についてはさらに乏しい知見しか得られていない。全国的な生息数の変化についてはまったく情報がないが、都道府県レベルでは少数の報告があり、たとえば北海道では1960年から2000年にかけて生息数が約4.5倍になったと推測されている。また、近年の調査に限れば、増加傾向が見られた地域(茨城県、2002-2011年)がある一方、必ずしも顕著な変化が見られない地域(福井県、2005-2012年)もあり、その傾向は一定していない。

また、生息分布については、環境省の自然環境保全基礎調査で繁殖分布調査が過去3回行われており(注2)、以前にくらべ分布域が広がったことが明らかになっている(注3)。しかし、本報告書が問題としているここ十年あまりの期間については生息分布の変遷に関する情報はほとんど無い。

(3)有害鳥獣としての位置づけ

指針では、アオサギは「一般鳥獣」に分類されており、その駆除については、必要に応じて狩猟鳥獣の管理に準じた対策を講じるものとされている。アオサギの駆除についてのこの基本スタンスは現在も変わっていない。しかし、近年、アオサギの駆除に関して制度面でいくつかの重要な変更があり、以前より簡易化された仕組みのもとでアオサギの駆除が行われるようになった。以下にそれら制度面での変更点を列挙する。

【捕獲許可権限の国から都道府県への変更】
平成11年の地方分権一括法の制定に伴い鳥獣保護法の一部が改正(平成12年4月1日施行)され、従来、環境庁長官が担っていた捕獲許可の権限の大部分が都道府県知事のもとへ移された。この結果、アオサギの有害駆除の権限は都道府県知事が担うこととなった。

【捕獲許可権限の都道府県から市町村への委譲】
同じく、平成11年の地方分権一括法の制定に伴い地方自治法が改正(平成12年4月1日施行)され、条例による事務処理の特例で都道府県知事の権限に属する事務の一部を市町村へ委譲することが可能となった。委譲可能な事務には鳥獣捕獲の許認可事務も含まれており、この結果、市町村自らがアオサギの捕獲権限を有し駆除を実施できるようになった。

【有害鳥獣捕獲に係る許可基準の緩和】
国が平成19年1月に告示した鳥獣保護法の指針において「有害鳥獣捕獲についての許可基準の設定」に一部変更があり、駆除を目的とした捕獲を許可するにあたり「特に慎重に取り扱う」べき対象種からアオサギが除外された。これに伴いアオサギの予察捕獲が可能となった。

【市町村による被害防止計画の策定】
平成19年12月に鳥獣被害防止特別措置法が公布(平成20年2月21日施行)され、市町村が鳥獣被害防止計画を独自に策定し、同計画に沿ってアオサギの駆除が行えるようになった。また、同計画でアオサギの駆除を計画した市町村は、条例による捕獲権限の委譲が行われていない場合は、都道府県に対し同権限の委譲を要望できるようになった。

もくじ

・ はじめに
1. 調査の概要
2. アオサギの置かれている現状
3. アオサギ駆除の現状
4. アオサギの駆除に係る問題と問題解決のための提案
5. アオサギの管理指針
6. 都道府県への提言
・ 図表
・ おわりに

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